■はじめに
このコラムは、DITAでのドキュメント作成、管理、運用に関心を持った人が、DITAを始めるのに役立つ基礎知識を発信します。
JDIG副議長でテクニカルライターの高橋慈子の書き下ろし原稿に加え、運営メンバーの2人の知恵と経験を引き出し、DITAに関わるプロフェッショナルにもインタビューしてまとめていきます。
まだまだ和文のDITAに関する書籍、文献が少ない中、アクセスしてくださった読者の方々の情報源のひとつとして、お役に立つことを願っています。
以下、不定期に追加していく予定です。
第1回 DITAって何? 基本のキ
第2回 DITAとこれまでの文書の型との違い
第3回 効果を発揮するためのトピックライティング
第4回 文書を書く、管理する方法はこう変わる
第5回 DITAの採用の壁となること
第6回 再利用の魅力と罠
第7回 ルールとスタイルが大切
第8回 ライターが持つべきスキル
第9回 コンテンツ戦略が肝
第10回 評価して進化すること
著者:髙橋 慈子
■第1回 DITAって何? 基本のキ
DITA、これ、「ディタ」と読みます。ディータと伸ばして発音する人もいますが、短いほうが英語圏の人に通じやすいようです。
このDITAは、データ構造を定義、規定する「XML」の1つの規格です。国際的な情報の標準規格団体OASISが規格を管理し、構造化文書の標準になりつつあります。
DTP(デスクトップパブリッシング)が企業の文書や商業文書の作成手法として、定着して20数年。中身を構造化して、使い方に合わせて自動的にフォーマットに合わせて出力する、DITAのような新しい手法が注目されています。
まずはDITAの意味と特徴から説明しましょう。
●そもそものDITAの意味
DITAは、Darwin Information Typing Architectureの略です。
情報の型を構造化し、定義するものといった意味合いです。
最初の「Darwin」は、英国の自然科学者チャールズ・ダーウィンの名前から由来しています。イラストのような白髭の肖像を教科書で見た覚えがある人も多いのではないでしょうか。19世紀、進化論を発表したことで知られる神学者であり博物学者でもあります。
ダーウィンが発表した「種の起源」では、生物は共通の祖先から進化したものと発表しています。DITAの元を開発したIBMでは、情報の型の進化をサポートするものとしてDITAと名付けたようです。共通の情報の型から、環境に合わせて「特殊化」できる。情報を進化させることを、最初から想定したもの。それがDITAです。
●DITAの特徴を2つ
DITAの機能や強みは、さまざまな面から説明できますが、まずは2つだけ。
1.技術文書に向いた標準的な情報の型が用意されていること
2.情報の型と、出力を分離していること
1の意味は、DITAは概要、手順、参考情報という、情報を整理するための3つの基本の型を持っています。だから、基本の型を使ってすぐに文書に適用できます。だから、拠点間、企業間で連携しやすく、グローバル展開する組織の情報発信にぴったりなのです。
2の意味は、情報の型に合わせて、指定したフォーマットで自動的に出力できることです。自動組版と呼ぶ人もいます。DTPのように出力するためにデザインレイアウトを、手動で整える必要がなくなるので、時間もコストも削減できると期待されています。
また、イラストでイメージで描いたように、PDFやEPUBといったパソコンやタブレットで見るためのフォーマット、Web、ヘルプと多様なフォーマットに出力できることも強みです。作成した情報を、読む人の環境に合わせて、形を変えられるのです。紙から電子へと移行している、今の時代に合っているというわけです。
今回はここまでです。
2つの特徴になるほどと思っても、「どうもピンとこない」、「スッキリしない」という人もいるでしょう。
次回以降、これまでの文書作成、管理、運用とどう違うのかを、具体的に解説していきます。